その時にいろいろなことを教えてもらったし、それで俺は変わったんや、と。
その時がK社長の転換期だったのかも知れません。
いまK社長は「人間味」という言葉を打ち出していますが、創業当時から実行してきた「人を大切にする」「気持ちの良いサービスを提供する」ということに対し、改めてキャッチコピーをつけたということだと思います。
従来以上にもっと「人間」「サービス」の大切さを考えて仕事をしなさいということを、改めて私たち社員に』伝えようとしているのではないでしょうか。
一九八九年、大阪に創業店「食べて得する居酒屋庵」をオープンすると、その創作料理はすぐに受け入れられ、店はたいへん繁盛しました。
まだ世の中に「創作料理」という言葉も生まれていない時代でしたから、いうなれば独占状態だったわけです。
ラブホテル街の一角という立地の悪さにも関わらず、いろいろなお客さまが「珍しい」と言って食べに来てくださったものでした。
創業店オープン時、三十一歳だった私は、店のメインターゲットとして同じくらいの年代の人たちを想定していました。
ところが店がくり返し情報誌に取り上げられたため、情報誌のメインターゲットである十代の若い人たちにも創作料理が浸透していきました。
雑誌は多くの店をくり返し取り上げます。
ただでさえ創作料理店が急拡大していたご時世です雑誌を読む若者、特に女性たちは「今日はこの店、明日はあの店と、その日の気分に合わせていろいろなお店を選ぶようになりました。
若い女性が店を浮気するのに雑誌媒体が油を注いでいるような状態です。
一つのお気に入りの店に足繁く通う「顧客」という概念が希薄になってしまったのを感じます。
情報が入ってこなければ、近所の店やなじみの店に通うしかない。
知らない店にわざわざ行こうとは考えません。
新聞を取っていなければ近所の魚屋でサンマを買うのが当然だと思っているけれど、折り込みチラシという情報が入ってくれば、少し足を伸ばしてでも一○円安いというあちらの店に行ってみようと思うのと同じこと。
マスメディアはあまりにも外食市場を煽ります。
競争激化の責任をすべてマスメディアに負わせるつもりはありませんが、雑誌に載らなければ不安で仕方がないと感じるような状況のなかで、私たち外食企業は闘っているのです。
マスメディアの立場からすれば、「宣伝をしてあげている」ということになるのでしょう。
それにしても飲食店舗、特に話題店というのは、アイドル歌手のような扱いです。
バツと取り上げてある程度話題になったら、次の瞬間にはもう別の店に夢中になっており、前の店はあっけなく捨てられる。
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